実験動物の術後管理

実験動物の術後管理について

1.術後管理が必要な理由

  • 研究者として倫理的な観点から苦痛を出来るだけ軽減させる措置を執らなければならない。
  • 疼痛のある実験動物を用いては適切なデーターが得られない場合が多い。
  • 動物愛護法でもできるだけ苦痛を与えないように動物実験を行うよう規定している。
  • 術後の管理を疎かにすると代謝障害により死亡する事がある。
  • 術後に鎮痛剤を投与することは術後の回復期間を短くするのに有効である。
2.動物種における術後疼痛の指標
マウス ラット ウサギ
摂食・摂水量が減少 摂食・摂水量が減少 摂食・摂水量が減少
疼痛による運動量減少 疼痛による運動量減少 疼痛による運動量減少
身体をよじる 背を弓なりにする ひきつる
腹部を床に押し付ける 腹部を床に押し付ける 腹部を床に押し付ける
たじろぐ 身体をよじる たじろぐ
  ひきつる ふらつく
    身体をよじる
3.鎮痛薬の種類と投与方法
  • 実験処置後は1日に数回、動物を観察し、疼痛を示す行動が認められた時は鎮痛薬を投与する。
  • 術後24時間までは非麻薬性オピオイドで鎮痛を行い、その後、非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)で鎮痛を行う方法が効果的である。
  • 鎮痛薬は軽度の副作用を伴う場合があるので注意する。但し、適切な鎮痛薬を選択し使用すれば、その影響は極めて限定的なものである。
    NSAIDsはプロスタグランジンの産出を抑え、創傷治癒過程において血液凝固を阻害する可能性がある。
  • 鎮痛薬が禁忌の場合、手術の創傷に局所麻酔薬のブビバカインを浸潤させる事により、4〜6時間の鎮痛効果を得る事が出来る。
下記記載動物種以外の鎮痛薬及び投与方法については動物実験施設獣医師にご相談下さい。
E-mail kaneko@iexas.med.osaka-u.ac.jp

作用分類 鎮痛薬
(商品名)
投与量と効果時間 用例 副作用
(注意点)
マウス ラット ウサギ
非麻薬性
オピオイド
ブプレノルフィン
(レペタン)
0.05-0.1 mg/kg sc
効果時間:
12時間
0.1-0.25 r/kg sc
効果時間:
8-12時間
0.01-0.05 r/kg sc or iv
効果時間:
8-12時間
外科的処置後の鎮痛
麻酔補助
軽度の呼吸抑制
ブトルファノール
(ベトルファール)*
1-2 r/kg sc
効果時間:
4時間
1-2 r/kg sc
効果時間:
4時間
0.1-0.5 r/kg iv
効果時間:
4時間
外科的処置後の鎮痛
麻酔補助
呼吸抑制の可能性
トラマドール
(トラマール)
5 r/kg sc or ip 5 r/kg sc or ip 3 r/kg iv 外科的処置後の鎮痛 呼吸抑制
非ステロイド系
消炎鎮痛薬
(NSAIDs)
カルプロフェン
(リマダイル)*
5 r/kg sc 5 r/kg sc 1.5 r/kg sc 整形外科
軟部組織疾患の術中
術後の鎮痛
消化管障害
肝障害の可能性
メロキシカム
(メタカム)*
5 r/kg
sc or po
1 mg/kg
sc or po
0.6 mg/kg - 1 mg/kg sc or po 外科的処置前後の鎮痛 消化管障害
肝障害
腎障害の可能性
アスピリン 120 r/kg
po
100 r/kg
po
100 r/kg
po
内臓痛の疼痛 消化管障害の可能性

sc:皮下投与 po:経口投与 im:筋肉内投与 ip:腹腔内投与

*動物医薬品
*ほとんどの鎮静薬は法律で使用が規制されています。

参考資料
Paul Flecknell, Laboratory Animal Anaesthesia Third Edition. Acaemic Press 2010