研究内容

ゲノム編集

遺伝子改変動物を作製して、個体レベルでの遺伝子機能の解明、ヒト病気の原因探究、治療法の開発を行うことができます。近年、CRISPR/Cas9などのゲノム編集技術の登場により、ノックアウト、ノックインなど遺伝子改変マウスの作製が簡単になっただけでなく、これまでは不可能であったラットやウサギ、サルでの遺伝子改変が可能となりました。
 我々は、これら実験動物(マウス、ラット、ウサギ等)における遺伝子改変技術の開発を行っています。
 1)遺伝子破壊(ノックアウト)
 2)複数遺伝子(ダブル、トリプル)の同時ノックアウト
 3)大規模ゲノム領域(遺伝子クラスター)の欠失
 4)1塩基(SNP)の置換
 5)標識マーカー(タグ、GFP等)のノックイン
 6)コンディショナルアレル(LoxP)の同時挿入
 7)大規模ゲノム領域(複数遺伝子)の置換
など、動物でのさまざまなゲノム編集技術の開発に取組んでいます。これらゲノム編集技術の確立、効率化、プロトコール化を行っていきます。
 これらの遺伝子改変技術の開発は、実験動物学だけでなくバイオサイエンスを大きく変えることになると期待しています。


ラットバイオリソース

我々は、これまで実験用ラットにおいて、

 1)ENUミュータジェネシス法
 2)ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)
 3)TALエフェクターヌクレアーゼ(TALEN)
 4)CRISPR/Cas9システム

による遺伝子改変技術を開発してきました。これら技術を用いて合計36機関との共同研究により、63系統の遺伝子改変ラットを作製してきました。これら遺伝子改変ラットは、順次、

ナショナルバイオリソースプロジェクト「ラット」
http://www.anim.med.kyoto-u.ac.jp/nbr

に寄託され、国内外の研究者に利用されています。

1)免疫不全ラット
ZFN技術により、世界で初めて重症免疫不全(SCID)ラットを作製しました。SCIDラットは、ヒトiPS細胞、ヒトがん細胞、ヒト肝臓細胞等の様々なヒト細胞・組織の移植研究に利用されています。

2)レポーター遺伝子GFP発現ラット
 CRISPR技術により、ラットRosa26遺伝子座に、CAGプロモーター制御下のGFP遺伝子発現ラットを開発しました。現在、CRISPRノックイン技術を使って、さまざまな遺伝子発現制御下におけるレポーター遺伝子発現ラットの開発を行っています。

3)ヒト疾患モデルラット
てんかん、がん、内分泌代謝、神経変性等のさまざまなヒト疾患原因遺伝子のノックアウトラットを作製しました。ヒト疾患の一塩基(SNP)変異だけをノックインした‘ヒト疾患モデルラット’の開発も行っています。
 


ヒト化動物

 ヒト化動物とは、

1)ヒト化動物(ゲノム)
2)ヒト化動物(臓器)

の意味に分けられます。

 1)ヒト化動物(ゲノム)は、ゲノム編集技術を使って、動物の遺伝子やゲノム領域を切り取り(ノックアウト)、ヒトゲノム遺伝子を貼り付ける(ノックイン)ことで、ヒト遺伝子群(ゲノム)を保有した動物のことです。ヒト、マウス、ラットは約3万の遺伝子を持っているといわれていますが、ヒトにしか存在しない遺伝子や、ヒトと動物で機能が異なる遺伝子があることがわかっています。特に、肝臓の薬物や毒物の代謝に関わる遺伝子(p450)、主要組織適合遺伝子(MHC)などの免疫に関わる遺伝子、知能や脳発達に関わる遺伝子など、重要な機能を持った遺伝子をヒト化することで、新しいヒト化動物の創成につながることが期待されます。

 2)ヒト化動物(臓器)は、拒絶反応の弱い免疫不全動物にヒトの細胞や組織を移植することで、移植されたヒト細胞や組織が、動物の体の中に生着、増殖した動物のことです。ヒトとマウス、ラットなどの動物では、肝臓、膵臓、心臓などの薬物代謝、あるいは神経、血液など細胞反応が異なることがわかっています。これら細胞や組織をヒト化することで、ヒト代謝や生体反応を動物体内で解析することができます。ヒト化動物(ゲノム)と異なり、組織や細胞を丸ごと変えることで、個体レベルでヒトの代謝パスウェイを見ることができるメリットがあります。ヒト細胞と動物細胞の両方を保有したキメラ動物を作ることができます。